らふえる訪看ICT活用日記

訪問看護業務ICT化について日々の実践から綴ります。

満足という花を咲かせる看護師の力

 医師は診療によって「人を生かす」仕事をしています。よって診療の質は「治癒率」という指標で測ることができます。

 一方、看護を一言で言うと「人が生きることを看る」仕事だと思います。そうなると看護の質は、その人がより良く生きることができている(できた)という満足度が評価の重要な要素となります。

 知識が豊富であること、看護技術が優れていることは看護師としては当然のことであり、このことだけで質の高い看護が提供できているとは思いません。看護の「看」は手+目で成り立つ漢字です。手(技術)だけではだめで、人々の生活全般を見る目が必要です。

 訪問看護の利用者は人それぞれに問題を抱え、看護サービスの内容も多様です。また利用者の考え方も生活環境や過ごしてきた人生によって異なります。これらの多様性に柔軟に対応できる看護師が「人が生きること」を看ることができるのであり、利用者の満足を引き出していると思われます。

 人々の生活の場に介入する訪問看護ほど看護師個々の力量が試される職場はないのではと思います。私は「看護の質=看護師の質」であり、訪問看護のプロフェッショナルを育成する運営が訪問看護事業の成功のカギを握ると考えています。

 それでは管理者が職員の質を向上させるためにすべきことは何でしょう。研修をたくさん受けさせることでしょうか? 困難事例をたくさん経験させることでしょうか? 

 成長する可能性のある職員は、他者からお膳立てされなくても自らの力で成長すると、私は考えています。ゆえに「自」を最も重視するのです。管理者がするべきことは、自ら成長できる職場環境を整えることだと考えています。良く耕された畑に種をまいたら、後は成長を待てばいいのです。

 らふえる訪問看護ステーションは「直行・直帰」と「チームナーシング制」という畑を作ってみました。着実に芽が出て育ち「満足」という花が咲き「信頼」「安心」という果実が実り始めています。

訪問看護の「質」とは?---そこを目指すプロセスが大事

「看護の質」とはこういうことだと説明できますか? 

 そもそも看護の質を斯々然々だと具体的に説明できる人はどの位いるのでしょうか? ひとつ言えることは、看護の質は看護が実践される現場の特性に応じて多様であるということです。

 前のブログに訪問看護事業は「看護の質を追い求めるビジネス」であると書きました。追い求めるからには具体的な目標や目標達成レベルの評価基準が必要となってきます。

 これは看護協会や数ある看護学会が決めるものではなく(指針として示していただいていますので誤解ないように)、それぞれの看護の分野や職場で目指すべき「看護の質」を模索しなければならないし、そのプロセスこそが看護の質を高めることにつながるのではないかと思います。つまり訪問看護の質は、それぞれのステーションの管理者および職員がこれこそが自分たちが目指す看護だと、全員で納得、同意して、日々そこに向かってがんばろう!というプロセスにかかっていると思います。管理者は紙に書いた餅で終わらないように、職員全員ががんばれる環境を作る役割があると思います。

訪問看護というビジネスは「質」で勝負

訪問看護という仕事はボランティア活動ではありません。看護が好きだからという理由だけではできませんが、それを実現させるために訪問看護をビジネスという視点で捉えてみようと思います。

 ビジネスとは消費者に商品またはサービスを提供して、その対価を受け取る営みです。訪問看護で提供するのは看護サービスです。提供される消費者は在宅の療養者(利用者)です。

 一般的なビジネスの世界では販売しようとする商品に「いくら位なら売れるかな」と、自分たちで値段をつけます。訪問看護では国が値段を決めていますので、利用者は提供された看護サービスに対し、介護保険医療保険で定められた金額の自己負担分を支払います。

 さらに訪問看護は限られた時間内で主治医の訪問看護指示書と(介護保険の場合は)ケアマネが立案するケアプランに従って看護を提供するので、実施する内容もそこから大幅に逸脱することができません。一方で看護師がベテランでも新米でも料金に差額はつきません。

しかし訪問看護がビジネスである限り、利用者が支払った金額に見合うサービスを受けていると満足していただく必要があります。満足を得るために他のサービス業のように追加サービスキャンペーンというようなおまけをつけることはできません。

そうなると、訪問看護は質で勝負するしかないのです。つまり訪問看護は「看護の質」を常に追い求めるビジネスではないかと思います。

訪問看護サミット2019

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12月6日に横浜で開催された「訪問看護サミット2019」に行ってきました。

今年は日本看護協会開催の「日本看護サミット2019」と共催ということで、参加者は約3000名を越えたとのことです。

医療の在宅シフトにより看護師の役割や活躍の場も地域に拡大していくことが強調されていましたが、訪問看護で働く看護師の割合は3%にも及ばない状態。ここにものすごい期待がかけられています。(大丈夫かい、私たち?)

訪問看護ステーションは訪問看護のステーションではなく、地域の看護ステーションという考え方には賛成。訪問看護だけでなく、地域住民の「生きる」を支える役割を担う事業ができれば地域包括ケアの要として胸を張ることができそう。(できることから始めよう、健康相談とかはできる!)

だからと言って、訪問看護ステーションが機能を拡大することにはリスクも伴う。看多機という事業形態が始まった時に私はワクワクしたが、バックに大きな組織をもたない訪問看護ステーションはちょっと無理と思いました。

点滴指示がでたり、褥瘡の集中処置が必要時など、短期間ステーションに泊まっていただくようなことはできるかもしれませんが、介護事業やディサービスなども併設しなければならないとなると資金的にまずアウト。

理想と現実・・・個人レベルでも国家レベルでもこのギャップあまりにも大きい!

震度4を2日続けて体験して・・・

一昨日と昨日、立て続けに関東北部を震源とする地震が発生し、土浦市でも震度4でした。

折しも、NHKでは地震の特集を4日連続で放送しており、それと重なって危機感が募りました。

茨城県東日本大震災の時も大きな揺れを体験し怖い思いをしたはずなのに、怖さを忘れている自分がいました。災害は忘れたころにやって来るといいますが、怖いことは早めに記憶から消去したいというのは人間の本能なのかもしれません。

さて、訪問看護をしている最中に大きな地震がきたらどうしましょう?

いろいろな対策を考えても、すべて空想の世界で、実際に地震が来た時に役に立つかどうかわかりません。

それでも、できる備えから始めるしかないと思います。

らふえる訪問看護ステーションでは、こんなことから始めています。

  • 緊急時の連絡方法と各々の役割を明確にすること
  • ガソリンはいつも満タン状態すること
  • 折に触れ(例えば大きめの地震があった後とか台風が来た後など)家族やご本人と話し合い、日頃から災害時の対応をできるようにする。

出来ることから、積み重ねていくことが大事だと思っています。

 

直行・直帰で働く時のコミュニケーション

直行・直帰で一番問題になることがスタッフ間のコミュニケーションです。

朝のミーティングがないので、一日の仕事の計画はひとりで考えなければなりません。

訪問先で困ったことがあっても、すぐに相談することもできません。

解決方法としては、メールやSNSのようなコミュニケーションツールを使うことです。

らふえる訪問看護ステーションでは、メディカルケアステーション(MCS)という医療介護専用SNSを活用しています。職場内だけでなく、医師やケアマネ、薬剤師など地域連携にも使えます。患者本人や家族も利用可能。とても便利なツールですが、なんと無料!

MCSを利用してから、ミーティングを開催するよりもスタッフの情報量は増えているように思います。

 

https://www.medical-care.net

 

 

直行・直帰では訪問予定はどうやって確認?

訪問看護では、利用者宅に訪問するスケジュール表がないと仕事ができません。しかも、キャンセルや変更は日常茶飯事でスケジュール表は1日のうちでも何回も変更されます。

直行・直帰を始めたころは、管理者がエクセルでスケジュール表を作成し、これをクラウドにのせて、職員のパソコンやスマホで確認できるようにしていました。但し、変更があるたびタイムリーに更新することが困難でした。手作業なので入力ミスはないかと、1日中、暇さえあればスケジュール表とにらめっこしていました。

そこで、スケジュール管理をIT化できないかと、プログラマーに相談して開発したのが業務管理ソフトTELESAです。開発には2年以上かかりました。このソフトにはスケジュール自動作成機能もあるので、1ヶ月分のスケジュールは前後の手作業を含めても1~2時間程度で完了。その後は、いつでも、どこでも、だれでもスマホタブレットで訪問予定の変更ができるようになっています。キャンセルなどの情報を得た職員が、その場で変更入力を行います。訪問先で予定変更の希望が出た時も、ステーションに持ち帰ることなく、その場で利用者の都合を聞きながら変更できます。職員全員の目で見ているので、入力ミスも早期発見、直ちに修正でき、信頼性の高いスケジュール表となっています。朝、ステーションに出勤しなくても、1日のスケジュールの確認ができるのは、このソフトのお陰です。

スケジュール表を共有するということは、職員全員の動向が把握でき、自分が担当していない利用者の訪問状況もわかるので、ステーションの運営に管理者だけでなく、全員で関わるという意識が根付いてきました。急に予定がキャンセルになった時に、「からだ空いたけど、手伝おうか?」とケアが多くて大変そうな訪問先に、自主的にヘルプに入ったりすることもできます。そして、管理者はスケジュール管理から解放され、今まで後回しにしていた仕事もできるようになりました。

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